October 23, 2006

ブロンドの行方・4


 カトウは、物質の成分分析とかその手の関係の大学院生だ。
 確かに髪の毛から血液型を割り出すことくらい、簡単に出来てしまう。

 翌日、ヒロキから受け取った髪の毛を手に、カトウの元を訪れた。
「……や、久し振り。」
 何故か笑顔が引きつる。
 カトウは無言で先を促す。「用件は何か?」と。
「あの、まぁ……色々あってこの髪の毛の血液型を調べて欲しいんだけど……お願いできる?」
「分かった。」
 そう言うと髪の入ったビニール袋を受け取り、奥へと戻って行った。
 ……どれくらい待たされるのか、そういうことも告げずに。

 カトウは……いつも必要最小限の事しか言わないし、表現しない。
 たまに「足りない」事もある。
 だから誤解が多い。だからあんな事に。
 ……。
 などとひとり浸っていると、結構早く戻ってきた。

「あ、もう解析終わった?」
 頷いて肯定する。
「で……何型だったの?」
「何型でもない。」
 ……。
 数十秒、意味が分からなかった。

「どういう意味?」
「これ、ナイロンだし。」

(続く)





Posted by hastur at 08:29 P | from category: 詩・散文 | TrackBacks
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