July 11, 2006
第9回リアクション E2 S−2
S−2 扉の向こう
あたい達の旅は楽といえば楽だったし、厳しかったといえば厳しかった。確かに言えることは楽しかったと言うことだ。
食料が少なくなればあたいが狩りをした。お金はあたいが家から多めに貰っていたので余り困らなかった。だけどそこを尽き始める前に、リンプがアコーディオンを演奏して稼いでくれていた。
ルアは星を記録するばかりで、あたい達にちょっと申し訳なさそうにしていたけど、あたいもリンプも、そんな事で不平を漏らすことはなかった。
あたい達は遠く西域まで見聞を広げた。
数年が経ち、あたい達は帰ってきた。
ルアは暫く家で休んだ後、クォリネへと向かったみたいだった。研究所を建てるためだろう。
あたいが久しぶりに家に帰ると、家は少し様変わりをしていた。学院を卒業したウォレンが手腕を発揮し、家をより大きくしていた。
そして新しい当主のあたいに、ウォレンは面白いことを教えてくれた。あたいは帰ったばかりだというのに、領主に持ち上げられたらしい。
クォリネは変わっていた。観光地としてのクォリネはそこにはなく、あの宿屋も無くなっていた。その代わりに大きな農場が村の横にあった。
村人も昔のように大きな麦わら帽子を被らなくなっていた。日差しもそれほど強くなくなっている。
ルアは館の跡地に研究所を建て始めたようだった。セリアや村の人たちも手伝っている。
建物も形になってきた頃、あたいはルアのところを訪ねた。
へぇ、だいぶ出来たね。
研究所を見、そんな感想を述べる。
うん、領主様のサポートもあるしね。
ルアはそう言うと、少しからかった表情を見せる。
実はあたい達が旅だった後、ノースウィンド家はクォリネ村を知行として受けるくらいにまでなっていた。そして今のクォリネの領主はあたいなのだ。
その時、ノックの音がした。
やってきたのはリンプとラグおじさんだった。
リンプはいったんあたい達と別れて、リュミエールやアイオリを見て回っていた。丁度物品交換のためにリュミエールに行っていたラグおじさんと会ったそうだ。
リンプが口を開く。
私にも何か手伝わせてください。
もちろん。こちらからお願いしたいくらいだよ。
彼女は故郷に戻ってきた。ルアがここに研究所を建てた理由は、そこにあったのかも知れない。
じゃ、研究所開設のお祝いに一曲披露しますか。わたしも普段はクォリネに居ますから、何かあったら手伝いますよ。
そう言ってラグおじさんは歌い始める。
星の暖かい光は
壮美と愉快を教えてくれる
星の冷たい光は
苦痛と困難を教えてくれる
でもいつまでも
教わり続ける訳にはいかない
全てが運命通りでも
自分の運命くらい自分で操る
星の軌跡に教わった
最後のこと…
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