July 07, 2007

第5回リアクション E2 S−2


 S−2 白と黒

 エリクシール・パルヴスの授業は、いつものように行われていた。出席者も然程変化が無い。あるとすれば、レビィ・ジェイクールの姿が見えないところか。先週、レビィはエリクシールに卒業前の下界行きを認めさせようとしたらしい。
 授業は着々と消化されていった。そして、そこに変化をもたらしたのはレイリアの質問だった。
「質問があるのですが、よろしいでしょうか?」
「どうぞ。」
 いつものエリクシール。
「服と一緒に体を変化させる魔法……そのようなものはありますか?」
 そう、トトに変身していたものが使った魔法だ。レイリアはエリクシールがそれを知っているのではないかと思っていた。
「それは難しいですね。確かに《アルカディアにもいるもの》の魔法には、身体を変化させる魔法がいくつもあります。しかし、身体以外のものを同時に変化させるのは難しいのではないでしょうか。」
「では、あり得ないと……?」
「いえ、可能性はあります。例えば、二つ以上の魔法を同時にかけた。また、新たに開発された魔法と言う事もありえるでしょう。」
 少し間をおき、エリクシールは続けた。
「その服が、体の一部と言う事も考えられますね。それならば、少しは納得できるのではないでしょうか?」
 なるほど、抜けた発想だった。レイリアには思いもよらなかった仮定だ。
「服も含めて、全てが身体だったと……?」
「あくまで、仮定ですよ。」
「そうなると、《アルカディアにもいるもの》の魔法が使えるものならば、誰でも可能となる……。」
「しかし、皮膚を服のように変化させるとなると、かなりの使い手でなければ出来ない事でしょうね。」
 少し前進したような気がした。しかし、確証はどこにもない。
「あと、急いで変身した為、髪の毛を残したようですが?」
 エリクシールに対してカマをかけてみる。情報元はデイン・ガリシュだ。
「どうやら、トトさんに化けていたものの事を言っているようですが……それは魔法の行使とは関係ないのでは?」
「と言いますと?」
「あなたは一日に、自然に抜け落ちる髪の毛の本数を知っていますか?」
「いいえ。」
「では、自然に抜け落ちる髪の毛が、一本も無いと思いますか?」
「いいえ。」
「そういうことです。魔法の行使の際、たまたま抜け落ちただけかも知れませんし、他の者の髪の毛かも知れません。」
 少し納得がいかなかったが、こう言い切られてしまっては話が進まない。仕方なくレイリアは質問を終わらせた。





08:59:32 | hastur | comments(0) | TrackBacks