February 04, 2006
第6回リアクション E2 S−1
ある告白に関する物語・B
不思議なのはいまだに一度も衝突していないこと。
ひょっとすると二人とも知らず知らずのうちに付かず離れずの距離を保っていたからかも知れない。
その方がいいのか、悪いのか。
知らず知らず……付かず離れず。
S−1 突然の風
あたいは自分の部屋で鳥の世話をしながら考え事に耽っていた。それは憎むことと好きになることについてだった。
そしてそれはルアの事になっていた。あたいはルアの事が、多分好き、だと、思う。ルアはどう思って……。
そのときタイミングよくノックの音がした。
僕だけど、ちょっといい?
ルアの声だった。
開いてるよ、どうぞ。
あたいはそう扉に声をかけた。
しばらくするとルアが姿を現す。
ねぇ、ジェイル。外に出てもまた会ってくれる?
あたいは突然の問いかけにちょっと驚いた。
なに言ってんだよ。当然だろ。同じ学院行ってんだしさ。
あたいは平静を装ってそう言い返すのがやっとだった。
うん、そうだね。あの、それで……その、出来れば、友達からでいいから、僕と付き合ってくれると嬉しいなぁ……。いや、そういう人いるんだったら気にしないで。
予想してなかった台詞だった。いや、心のどこかでは期待していた台詞だったのかも知れない。でもあたいはこんなときだと言うのにあまのじゃくだった。
あ…あのさぁ。あたいみたいなのでいいの? あたい女らしくないし、優しくない奴だし、ルアにはもっと……。
なに言ってんだよ! 僕はそのまんまのジェイルが好きなんだよ。
ルアは強くあたいの言葉を遮った。しっかりと見据えた綺麗な緑色の目は、その言葉の真剣さを語っていた。
あたいは嬉しくなって思わず彼に抱きついていた。
ありがとう。
あたいはどうしてもこの単語を言いたかった。
ありがとう。
あたいは抱きついたまま繰り返した。
ありがとう。そう言ってくれると本当に嬉しい。あたいもルアの事、好きだよ。
……え?
ルアの気持ちを確かめるのが恐かった。変なこと聞いて、今までのように仲良く出来なくなるのが恐かった。でもルアの方から……ありがとう。
だけど最後に一言、いたずら心が顔を出した。
けどさ、あたいの料理、ちゃんと残さず食べてな。
08:17:36 |
hastur |
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