November 03, 2006

ブロンドの行方・5


「どういう意味?」
「これ、ナイロンだし。」

 混乱してしばらく呆けていると、カトウは付け足してこう言った。
「人毛では無い。ウィッグかエクステか……そういうものかも。」
「そう。……あ、ありがとう。」
 私はまだ少し混乱の残っている頭で、礼をした。
「じゃ、まだ実験あるんで。」
 踵を返すカトウ。去り際に唐突に、こんな言葉を残した。
「その頭、似合ってるよ。」


 さて。
 ちょっと今までの情報を整理してみたくなった。
 カエデがかつらの毛を持ってきてカマをかけたのか?
 それとも、そもそもヒロキの連れ込んだ女性がかつらをかぶっていたのか?
 そして自分はわざわざ髪を染める必要があったのだろうか?

 待てよ。
 最初からヒロキのいたずらだったってことはないか?
 結局金髪の人物はいなかったのかも知れない。
 写真だって、いたずらに協力してもらって撮っただけかも。

 ふと、美容室での出来事を思い出す。
 彼女がブロンドのウィッグをかぶり、写真を撮ったとなると……?

 考えれば考えるほど、真相がわからなくなってしまった。
 大体そこまで大掛かりなことをする必要がどこにある。

 謎は深まるばかりだった。




Posted by hastur at 08:24 P | from category: 詩・散文 | TrackBacks
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