September 10, 2007
第8回リアクション D1 S−1
8 1/2 (Otto e Mezzo)
ショウ・服部がこの授業に参加し始めて、8週間と半分程が経った。
この間、学んだ事はなんだろうか?
魔法の熟練? 自然操作の方法? あるいは、問題解決能力の向上? 団結する事の大切さ?
その答えが見つかるのは、まだ先の事かもしれない。
S−1 禁じられた情事の森
『湖』から戻ってきたショウ・服部は、先程ラウダンクルクス・ケレスから手渡された紙片をじっと睨みつけていた。そこには、以下のようなものが書かれていた。
・AC→ニエレノ
・CE→ノイニイ
・BE→ジエアイ
・残りはセ
いくら睨みつけていても、ここに書かれている文字が何を表しているのか、一向に分からなかった。結局、その紙を大事にポケットにしまい、別の行動を起こす事にする。
『森』の中を見ると、クロエ・アトラが退屈そうに、木の根っこに寄りかかり座っていた。
「……やっと帰ってきたか。あれ、フォルティアは?」
ショウの姿を認め視線を合わせると、一緒についていったはずのフォルティア・マイアが居ないことに気付くクロエ。
「なんか、『向こう』の人と話し込んでまして……なんだか話が長そうだったので、一人で戻ってきました。」
「ふ〜ん……で、『鬼』は?」
「それなら、先に戻ってるはずですが……見ませんでした?」
クロエは首を振る。
「まぁ、『森』も広いし、どっかにいるんじゃない? なんならミルウスに探させてもいいし。」
「いえ、それには及びません。」
クロエの寄りかかっている木の後ろから、『貴婦人』が現れた。
「今クルクスがどこにいるかは言えませんが……多分、ミルウスでも探し出せないでしょうが、この『森』で呼びかけてくだされば、いつでも会えるように致します。」
ポリュディクスは優しく、しかしどこか事務的にそう二人に告げた。
「いえ、別にいいですよ。僕はこれから『精霊王』に会いに行くつもりですし。」
ショウはそう言うと、荷物をまとめ始めた。
「『精霊王』に? 一人で?」
クロエが問いかける。
「まぁ、仲間は多い方がいいでしょうけど……先生は動いてくれそうに無いですし。クロエさんはどうします?」
「行くに決まってるでしょ?」
そう答えると、クロエは指笛を鳴らし、鳶を呼び寄せた。
「で、具体的にはどこへ?」
「えと……『淵』だったかな? そこに行けば会えると思います。」
「……具体的に聞いてるんだけど。」
クロエが三白眼で睨む。確かに『淵』がどこにあるかまでは誰も知らなかった。
「……『森』の精霊さん。聞こえます?」
ショウはクロエの視線をあえて無視し、森に向かって話しかけた。
「なんだい?」
森の、少し奥の方から返事が返ってくる。
「この前言ってた『淵』の場所を聞きたいんですが。」
「あれ、言ってなかったっけ? いいよ、教えておこうか。ここから南に行くと『湖』だ。」
「それはもう知ってるよ。」
「で、そっちの方には『淵』はない。」
この遠回しな説明に、クロエの苛立ちはかなり高まった。
「だから『淵』はどこっ! お言い!!」
「おお、怖い怖い……まぁ、最後まで聞きなって。ここから東に向かうと『山』がある。そこは星も見えるし、虹も見えるところだ。逆に森を抜けて西に向かうと『野』がある。」
森の精霊はそこまで言って、少し間をおいた。ショウはまたクロエが暴れださないように様子を窺っていた。が、クロエの方は自制しているようだ。
「北に向かって『川』を辿ると、そこに『淵』がある。今はね。」
「今は?」
「『淵』は決まったところには無いのさ。誰かが強く願えば、そこに現れる。だから、本当は場所なんて聞いても意味が無いのさ。」
「だ・だ・だったら最初からぁ〜〜!!」
『森』の一部が壊滅的ダメージを負った。
遠出の用意をしようとしていたショウとクロエだったが、先程の説明を受けて、『淵』を『森』の隣に呼び出すことにした。二人で目を閉じて集中する。
(ここに『淵』が現れますように……!)
すると、軽い地響きのようなものを感じ取れた。恐る恐る目を開くと……。
何にも無かったはずの空間に『川』が、そして、目の前の地点にはとろとろとした河流と深みがあった。『淵』だ。
「ここに『精霊王』が?」
ショウは目を凝らすが、そこに人影はおろか、動物の類も見つけることは出来なかった。『淵』は深緑色をしており、川底は見通せなかった。
「この中って事じゃない?」
クロエは興味津々といった感じで『淵』を覗き込む。
「『虎穴入らずんば虎児を得ず』。入ってみますか。」
ショウの言葉に頷くクロエ。
18:53:08 |
hastur |
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