August 29, 2007
第7回リアクション D1 S−2
S−2 水の中のナイフ
キラキラと光る小さな扉。その元へ一行は再び集結していた。ラウダンクルクス・ケレスとポリュディクスによると、これは精霊界の扉というものらしい。
「なんだ、全員行くのか?」
ラウダンクルクスが集まった面々を見回す。
「ええ、虎穴入らずんば虎子を得ずといいますし。」
答えたのは《アルカディアにもいるもの》のショウ・服部。
「どこの諺やら……。」
悪態をつきつつ、《契約者》のクロエ・アトラ。
その他に、ルゥ・ルゥとティア、《アルカディアにもいるもの》のフォルティア・マイアも同行の意を表している。
「では……そろそろ行くか。」
ラウダンクルクスは輝くドアに手をかけた。
一行が扉を潜り抜けた先は、然程今までと大差の見られない光景だった。青い空があり、大地があり、緑が覆い茂っている。しかし、全員が扉を抜けたその時、扉は夢幻のように消えてしまった。
「……これで後戻りできない、か。」
ラウダンクルクスが冷淡に言い放つ。
「お約束だよねぇ〜。」
お気楽な感想を述べるのはルゥ。
「早く、精霊の王様っていうのに会いに行こうよう。」
ルゥたちの目的は、王様に歌を献上する事らしい。
一行は取り合えず歩を進めた。太陽の位置からすると、北に向かっているようだ。
暫く行くと、目の前に綺麗な湖が姿を現した。
「ここで、一休みとしませんか?」
あての無い散策に疲労がたまってきたのを感じ取り、ポリュディクスがラウダンクルクスに提案した。
「……そうだな。」
一行はその場に腰を下ろし、湖の水で喉を潤したりした。
「あら? これは……。」
ポリュディクスが何かに気付いたようだ。
「どうしたの?」
覗き込むルゥ。
「この湖、『鏡』と繋がってるかもしれません。」
「鏡?」
「学院に別世界と音や風景を交信することが出来る魔法の鏡があるんです。この湖、その鏡に繋がってるみたいです。」
「どう使うんです?」
今度はショウが湖を覗き込む。
「どいてみろ。」
それまで、なんとなくこちら側を窺っていたラウダンクルクスが他の者を制する。
「まさか、これを使う機会があるとはな……。」
自嘲気味に笑った後、速唱するラウダンクルクス。
暫くすると、湖面に一部の者にとって見慣れた部屋が映し出される。
「これは……ペンタのプレイルーム?」
「あんなところに鏡なんてあったかしら?」
クロエとフォルディアが声を漏らす。
「……クルクス、どうしたのですか? それに、ルゥも。」
湖面の向こうからはシーラ・モラリスの姿が見えた。
「ルゥルゥは精霊界に来てるの。」
師匠の姿を認め、嬉しそうに言葉を交わすルゥ。
「そういう訳で、当分そちらには帰れないかもしれない。」
「そんな……。」
シーラは少なからず動揺しているようだ。
「何かあったら、この鏡を使って連絡する。……そちらは何か変わったことは?」
「そうね……選挙の公示が間近ですし、色々起きるでしょう。あと、中庭の花壇が荒らされてましたが……。」
「なんですって!」
それまで静かに聞いていたフォルティアが、急に反応する。
「は、早く帰って花壇を綺麗にしなきゃ。」
「落ち着けって。」
クロエがフォルティアを押さえつける。
「……ま、そんなところで、一旦切るぞ。」
こうして、学院との通信は途切れた。
「一応、さっきの魔法は教えておく。勝手に好きな時に使うんだな。」
ラウダンクルクスは先程の通信魔法をショウ達に教え込んだ。そして、陽も傾いてきたということで、今日のところはここで野宿する事となった。
01:38:43 |
hastur |
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