August 11, 2007

第6回リアクション E1 S−3


 S−3 飼育

 その後、グレイとミアには改めてカヲルを紹介された。
「まぁ、あんまり学院の事とか教え込んでないでな。おぬしら、面倒みろ。以上。」
 紹介と言っても、この程度だが。
「よろしくねっ!」
「こちらこそ、よろしく☆」
 カヲルは元気よく挨拶を交わす。性格、口調はミアによく似通っているようだ。
「じゃ、取り合えずぅ……師匠の部屋でも探検しよっか?」
「おいおい……。」
 グレイの方は、あまり波長が合わないようだ。

 様々な人工生命が保管されているテオフラストの部屋。数多くの籠や檻が、所狭しと並んでいる。
「ねぇ、ミア。これ何?」
「あ、それは『フレッシュゴーレム』っていうんだよ。この前、この部屋までやってきたの。」
 ミアが指差す先は、先日のゴーレムだった。胴体と腕だけの奇妙な姿。
「じゃ、これは?」
 次は、檻の中に閉じ込められた、鼠のような生き物だった。身体は黄色の短い毛に覆われ、「ビガァ……ビガヂュ……」という奇妙な鳴き声をあげている。
「何かなぁ……ミアも知らないよ。でも、可愛いね。」
 そうか?
「出してみようか?」
 ミアは直接、手にとって撫でてみたい衝動に駆られた。
 そして、檻を開けた瞬間。
「ビガァァァアアア!!!」
 その鼠のようなものは、ものすごい形相で飛び出してきた。
「きゃっ! あ、待て〜!」
 部屋から逃げようとする鼠。それを追う、ミアとカヲル。
「ビガァァァアアア!!!」
 ミアの手が届こうかという、その時。鼠は奇声を上げて、ミアたちの方へ電撃を発した。
 二人はビリビリビリビリと痺れて、その場に崩れ落ちた。

 たまには先生の部屋を掃除しようか。そんな訳で、テオフラストの部屋にやって来たグレイ。
 部屋に入ると、ピクピクと痙攣しているミアとカヲルを発見する。
「おい! どうした?」
 一先ず、二人に『癒し』を施し、事情を問うグレイ。
「えっとねぇ……黄色いネズミ、逃げちゃった。」
「黄色い鼠? 『電気鼠』か……。」
 グレイは頭を抱えた。『電気鼠』はもちろんテオフラストの作品だ。身なりは小さいが、電撃能力を有する、結構危険な人工生命だ。
「これがばれたら、先生になんて言われるか……。」
「じゃ、ばれる前に見つけ出そう!」
 カヲルが能天気にそんな事を言う。
「それしかないですか……。」
 三人は電気鼠を探す旅に出た。探さないでください……、という心境だろう。グレイだけは。

 結局、見つけることは出来ず、テオフラストに事の次第が露見した。あっさり。
「何たる事じゃ! ミア! 当分飯抜きじゃ!」
 テオフラストの雷が落ちる。
「……ま、いい機会じゃ。グレイ、これをもって卒業試験とするぞ。」
「と、言いますと?」
「電気鼠を捕らえて来い。それが出来れば卒業とする。しかし、ただ捕らえるのでは面白くない。おぬしも鼠を改造した生物を作り上げ、電気鼠を倒して来い。」
 またも、無理難題を叩きつける師匠。
「でも、電気鼠の居場所が分からない事には、対決させようにも……。」
「うむ。そんな事もあろうかと、な。」
 テオフラストはそう言い、籠の中から一匹の変な生き物を取り出した。「うさうさ……うさうさ……」という鳴き声を発している、細長い兎のような生き物だ。
「こいつは『ヘビウサギ』という人工生命じゃ。こいつは電気鼠の居場所を探知する能力を持っておる。これで居場所も分かろう。」
 かくして、グレイの探索行が始まった。






00:51:26 | hastur | comments(0) | TrackBacks