October 23, 2006

ブロンドの行方・4


 カトウは、物質の成分分析とかその手の関係の大学院生だ。
 確かに髪の毛から血液型を割り出すことくらい、簡単に出来てしまう。

 翌日、ヒロキから受け取った髪の毛を手に、カトウの元を訪れた。
「……や、久し振り。」
 何故か笑顔が引きつる。
 カトウは無言で先を促す。「用件は何か?」と。
「あの、まぁ……色々あってこの髪の毛の血液型を調べて欲しいんだけど……お願いできる?」
「分かった。」
 そう言うと髪の入ったビニール袋を受け取り、奥へと戻って行った。
 ……どれくらい待たされるのか、そういうことも告げずに。

 カトウは……いつも必要最小限の事しか言わないし、表現しない。
 たまに「足りない」事もある。
 だから誤解が多い。だからあんな事に。
 ……。
 などとひとり浸っていると、結構早く戻ってきた。

「あ、もう解析終わった?」
 頷いて肯定する。
「で……何型だったの?」
「何型でもない。」
 ……。
 数十秒、意味が分からなかった。

「どういう意味?」
「これ、ナイロンだし。」

(続く)





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October 11, 2006

ブロンドの行方・3


「黒く染め直せ?」
「その通り。」

 流石にここまで振り回されるのはどうかと思い始めた。
「その……見間違えとか勘違いとか、可能性あるんじゃない?」
 ちょっと歯向かってみた。
「うん? ……。」
 ヒロキは少し、言葉に詰まった。自分の理論の強引さに気付いてくれたのか。
 そして次に出たセリフは……。
「じゃぁこうしよう。この髪の毛を鑑定して、B型だったらあの子のものと認めるからお前は金髪のままで。それ以外だったら偽物。黒くしろ。」
「……はぁ?」
 提案を理解するまで数秒かかった。

「なんでB型だったら?」
「話をした時、献血の話題になって。で、献血手帳見せてもらったから覚えてるのさ。あんなものをイチイチ偽造する奴いないじゃん?」
「そうかもしれないけど……カエデが用意した髪がたまたまB型だったら?」
「いや、それは仕方ないし。」
 仕方ないですむのか。
「そもそも、色が一致してるのも出来すぎだし。」
 ……この人、自分の言い分に矛盾が生じつつあることに気付いてないのか?

「まぁそれはいいとして……どうやって鑑定なんかするの?」
「そりゃ、カトウに頼めば一発じゃん。」
 なんか……嫌な名前を聞いた。
「あ、なんかまずかった?」
「別に……いいけど。」

(続く)





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