January 11, 2006

第6回リアクション E1 S−1


 ある告白に関する物語・A


 告白する勇気の持てる魔法を、僕に……。


 S−1 境界線上の台詞

 なんだかよく分からないけど、僕は吹っ切れていた。きっかけはなんでも良かった。今日の朝御飯がいつもより美味しかったとか、気持ち良く空を飛べる夢を見たとか、とにかくなんでも良かった。
 僕はポジティブに、前向きに考えようと決めた。これ以上悪くはならない。
 ちなみに今日見た夢は巨大なキャロットケーキを無理矢理食べさせられそうになる夢だった。でも今の僕には関係なかった。
 僕はジェイルと向き合うため、彼女のいる部屋へ向かった。

 僕は緑色の扉の前に立った。ちょっとした緊張で扉の色を間違えかけた。
 静かにノックする。
 僕だけど、ちょっといい?
 中からは、開いてるよ、どうぞ、と言う声が返ってきた。
 ジェイルは青い鳥の世話をしているところだった。手に餌を乗せ、頭の上の鳥にあげていた。
 ねぇ、ジェイル。外に出てもまた会ってくれる? ジェイルは突然の問いかけにちょっと驚いたようだった。
 なに言ってんだよ。当然だろ。同じ学院行ってんだしさ。
 うん、そうだね。あの、それで……その、出来れば、友達からでいいから、僕と付き合ってくれると嬉しいなぁ……。いや、そういう人いるんだったら気にしないで。
 多少しどろもどろだった。でも僕の言いたかった台詞は言えた。僕はバクバクいう心臓を押さえて彼女の返事を待った。
 あ…あのさぁ。あたいみたいなのでいいの? あたい女らしくないし、優しくない奴だし、ルアにはもっと……。
 なに言ってんだよ! 僕はそのまんまのジェイルが好きなんだよ。
 僕は思わずジェイルの言葉を遮った。いつのまにか僕は彼女の目をしっかりと見据えて、喋っていた。
 そして……。
 次の瞬間、彼女は僕に抱きついていた。
 ありがとう。
 生まれて初めて女の子に抱きつかれた僕は、どうしていいか分からずおろおろしていた。
 ありがとう。
 ジェイルはその一言を繰り返していた。
 ありがとう。そう言ってくれると本当に嬉しい。あたいもルアの事、好きだよ。
 ……え?
 ルアの気持ちを確かめるのが恐かった。変なこと聞いて、今までのように仲良く出来なくなるのが恐かった。でもルアの方から……ありがとう。
 僕は魔法に掛けられているような気分だった。これ以上悪くはならない。その通りだったのかも知れない。だけど最後に一言、釘を刺された。
 けどさ、あたいの料理、ちゃんと残さず食べてな。





08:23:45 | hastur | comments(0) | TrackBacks