May 25, 2006
London
帰り道の空は薄暗く泣いていた。
今日も適当に授業を終え、俺は遊びに行くところだった。放課後の気分は、例え雨が降っていようが退屈な授業に比べると幾分と良かった。
雨粒が傘を叩く音も、耳には届かない。頭の中は既にゲームの事で一杯だった。
昨日までは暖かい春日和だったが、今日はまた薄寒い気候に戻っていた。俺も仕舞いかけた革ジャンを引っ張り出して着ている。レッグウォーマーも少しは役に立っているようだ。
ゲーセンが近くなると、自然と足取りも軽くなる。低い所に降ってくる雨をブーツで蹴飛ばしつつ、歩調はスキップに近いものになる。
傘を少し傾け空を見上げると、そこにはどんよりとした灰色の空が広がっていた。何となく今日の空は、ロンドンのそれに似ていると感じる。
実際にはロンドンと言う都市は既に海の底だが、20世紀の記録によるとこういう天気の多い街だといつか社会科の時間に聞いたような気がする。
そういう気分で街を見回せば、すぐそこのファーストフード店でもフィッシュ&チップスが売っている気がする。
その時初めてお腹が減っていることに気付き、俺はその店に吸い込まれる事に決めた。
不思議な事に、その空間はロンドンだった。BGMはビートルズの『Please, Please me』で、客の話題はフットボールだ。
よく聞けばそれは最近流行の曲であり、プロ野球についての話し声なのだが、俺はここは聞き間違え続けることにした。
フィッシュバーガーとフライドポテトを買うと、身近な席に着き、今夜は霧になるかも知れへんなぁと独り言を言ってみた。
近くの席からは、地元チームが開幕後好調だという声が聞こえてくる。俺はそれをリバプール・フットボール・クラブに置き換えて聞いてみる。
隣の話が6チーム目の戦力分析に入った時、全て食べ終えたので席を立つ。
自動ドアをくぐり、傘をさすと、目の前を二階建てのバスが通り過ぎていった。
10:05:22 |
hastur |
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