August 03, 2005

第4回リアクション D2 S−2


 S−2 本日のわさび率は20.2パーセント

 それからの数日は考古学者からの返事を待つ毎日だった。
 暑い……。
 真夏のかんかん照りの中、外にいると体が溶けるような感覚を抱く。
 かといって風通しの悪い研究室に居続けることはもはや死を意味する。そこは既に人の滞在を許すような場所ではなかった。熱気を持った鉄器にうっかり触るようなことでもあれば、たちまち肌に無数のミミズ腫れを作ることとなろう。そのような鉄製のパーツが所狭しと並べられているのだ。誰が好き好んで親から貰った大事な体に訳の分からぬ烙印を押すような行動に出よう。
 更にはその熱気で誤動作を起こす発明品達が、部屋中を飛び回っていた。「自動アイロン機」が所構わず焼き続け、「自動散髪機」が所構わず切り裂いていた。殺したい人間がいるとしよう。その人物をこの部屋に放り込めば5秒と経たずその願望は叶えられるだろう。
 ジャックの研究室は斯様に学院一危険な地域となっていた。
 仕方ないのでジャックは木陰で涼んでいた。例年の夏の風物詩ということもあって、もう慣れたものだった。
 ただ今年が例年と違うのは、「この部屋立入禁止」の張紙を、張り忘れたことくらいだろう。





08:34:13 | hastur | comments(0) | TrackBacks