October 28, 2005

神戸在住 7巻

 アフタヌーン連載中、木村紺先生の私小説風の漫画です。「私小説風」と書きましたが、どこまでノンフィクションなのかは全く分かりません(苦笑

 東京生まれ、東京育ちの主人公が神戸の大学に通い、そこでの出来事を綴ったものという感じのお話です。
 大きな事件は起こりませんが、家族や友人との関係や日常的な小さな出来事をエッセイのように読ませます。

 絵はトーンを使わない、適度にデフォルメしていて温かみのある独特な画風で、話の内容とよくマッチしていると思います。
 コマとコマの間に主人公のナレーションが入る、という手法も上手く活きている……この手法は(個人的には)縦書きの台詞と横書きの台詞を混在させて「間」を作り出していた白倉由美先生の漫画にちょっと似ているとも思いました。

 主人公の桂が人一倍感受性が高いという点がありますが、その他の点ではかなり「普通」なので、共感しやすいですね。
 自分の場合、特に弟との関係のところでダブる部分が多いので、より共感を呼びます。はい、自分も弟に「お前」と呼ばれます(苦笑) 結構、みんなそうなんですかね…。

 この巻では、桂が美術の道に進むきっかけとなったイラストレーター、日和さんとのエピソードが柱です。
 いつもは桂はこの作品における「眼」であることが多い……傍観者、観察者、第三者であることが多かったのですが、このエピソードは「主体」となってます。その分、ちょっと異質な感じがあります。
 言い方を変えれば今まではちょっと他人事と軽く受け取れていた話が、急に自分の事のように錯覚し、ズシリと心にくる、という感じでしょうか。


 この作品、連載開始が1998年。息の長い作品ですねぇ。
 作品中では主人公達が三回生なので、もう一年分は続くんでしょうかね。






08:12:52 | hastur | comments(0) | TrackBacks