June 08, 2005

第3回リアクション E3 S−2


 S−2 兄弟の想い

 館の件は娘さんの準備というのを待ってみることにした。どうやら娘さんは森の方へいって何かを集めているようですが……
 という訳で、その日、わたしは村で情報収集をしていた。そこで、ちょっと面白い話を聞いた。村人の一人がエルフの街、リュミエールまで食料を調達しにいったときの話らしい。
 どうやら三ヶ月前、リュミエール付近で大きな地震があったらしい。その件で王郡から何人かの貴族と騎士、研究者がリュミエールに来ているという事だ。
 従来のエルフ族ならば、自分たちのことは自分たちで解決させるという。そのエルフが、今回は人間たちの力を借りようとしている。わたしは少し興味を引かれた。
 わたしがその話に惹かれたのは、元々わたしがエルフなどの人間以外の種族に特に好意を持っているからかもしれない。そういえばこの土地も、元々はエルフの土地だったと、先日聞いたばかりだった。
 ふと村の中心部を眺めると、村長さんたちと一緒に汗を流すセリアの姿が目に入った。セリアはわたしと同じように、館に入る方法に関しては娘さんに任せることに決めたようだった。ただわたしと違うのは、その余った時間を村の復興作業、特に力仕事に当てていたという点だった。
 そのころになって、セリアという青年の性格が少しずつ分かり始めていた。大人しくて、心配性。兄想いで、困っている人をほっとけない。その腕力と剣術の高さとも相まって、いい兵士になれると思う。
 ウォレンはというと、まだ護衛になる人を見つけられないでいた。彼も非常に姉憩いだ。貴族だからなのか、元々なのか、少ししたたかなところがある。また、彼は頭がいい。知識が豊富で、それだけではなく行動力もある。彼も、いい貴族になれるのではないかと思う。
 セリアとウォレン。わたしの見た限り、結構いいコンビだと思う。まだそれぞれ14歳と13歳、子供らしさも見え隠れするが、将来は有望だろう。

 おじさーん。セーくーん。用意が出来たよー。
わたしがポーとそんなことを考えていると、森の方から娘さんが顔を現した。
 館に入りたくなったら、いつでも言ってね。
 栗色の髪をくるぶし辺りまで伸ばした娘さんは、その髪を大きく揺らしながら駆け寄った。べつに、館に行くのは今すぐでなくてもいいらしい。
 わたしはひとつ、咳払いをした。
 ……さて、どうしましょう。


(次回「ある殺人に関する物語」へ続く……)




指針NO.

E01:館を調べる。
E07:館に入ろうとする。
E08:クォリネの復興作業を手伝う。
E09:ウォレンと王都に戻る。
E10:アクセルたちと海に行く。
E11:リュミエールへ行く。
E99:その他のことをする。





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June 07, 2005

第3回リアクション E3 S−1


 ある父と娘に関する物語・C


 その昔、わたしは父との合作を思案した。
 父がリュートなどの楽器を象ったパンを焼き、わたしがパンの歌を歌うのだ。
 でもこれは幻の企画に終わった。父は、歌など歌う暇があったらパンの焼き方を覚えろ、の一点張りなのだ。
 いい案だと思ったのですが……。


 S−1 村の体調

 村長の娘さんが着いて来ていたようで。でも今は忙しくて、遊んであげられないんですよ。
 わたしはそう言おうとしたのだが、待てよ、と思った。
 お嬢ちゃん、わたしたち、この館の中に入りたいのですが、この館に入る方法、何か知りませんか。セー君とウォー君のお兄さんとお姉さんが中にいるみたいなんですが、中に入れなくて困ってるんですよ。
 わたしは娘さんにそう聞いてみた。大人と子供とではものの見方が違うし、意外な方法で簡単に入ることができるのかもしれないと思ったからだ。
 でも娘さんの答えはこんなものだった。
 本当の助けが必要なとき、入れるようになるの。
 ……実に簡単な方法だった。
 もうちょっと具体的な方法、無いですかね?
 わたしはもう一度聞いてみた。
 んっとねぇ、あるよ。ラグおじさん、入りたいの?
 わたしはおじさんか? まあそんなことより……。
 ええ、出来れば入りたいのですが。
 ちょっと用意に時間がかかるの。準備が出来たら教えるね。
 そう言って娘さんは帰り始めた。わたしたちも後をついて村に戻った。

 クォリネの村につくと、村長の奥さんが出迎えてくれた。
 今日はどうでした?
 今日も駄目でしたね。
 このところずっと白い館に行っていたので、こういう会話になってしまう。
 おかーさん、ごはん!
 娘さんはそうせがんで、小屋の中へ入って行った。

 小屋の中でちょっと遅めの夕食を頂きながら、いろんな話題が上がった。まず、ウォレンが口を開いた。
 明日、王都に戻ろうと思います。そろそろ家の者に現状を伝えないといけないので……。
 え? でも……一人で大丈夫か?
 セリアが口を挟む。そうなのだ。街道には結構危険が潜んでいるのだ。時には野獣、また時には野盗が襲ってくるからだ。
 わたしがここに来るときはリュミエール行きの隊商に紛れ込んでいたので大丈夫だったのだが。
 そういえば、来るときはどうしたんですか?
 平気でしたよ、セリアさんがいたから。もっとも何とも遭遇しませんでしたけど。
 なるほど。ならせリアも一緒に戻ればいいと思っうのですが。
 自分は……もう少しここに残って、館の扉を開ける方法を探すつもりですが。
 セリアは、あまりここを離れたがらないようだ。
 そうですね……では護衛になる人が見つかるまで、ここにいます。
 ウォレンはそう言って、妥協したようだった。

 次に村長さんが話し始めた。
 館のことが解決してないようだが、オレらは来月、海に行くことにしたんだ。どうするよ?
 それは突然の申し出だった。セアたちにしてみれば、それどころではないということだろうが、わたしも少いま息抜きも必要と思い始めていた。
 いや、別に遊びに行くわけではないがな。そろそろ近隣の村から分けてもらった食料もなくなりかけているんだ。で、秋になるまでの食いつなぎということで、海岸の村と交渉して、干物なんかを分けてもらおうということだ。
 村長さんも、こういうことはちゃんと考えているようだ。
 建物の方はだいぶ直った方だから、そろそろ観光事業の方も再開しなくちゃいかん。でないと、食料を買う金もなくなってしまうからな。
 そうなのだった。この村は農業と狩猟だけでなく、観光で持っているという側面もあったのだ。このままでは、蓄えを作ることは難しい。
 あんた、何か手伝う気はないか?
 村長さんの問いかけに、わたしはすぐには答えられなかった。




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