November 16, 2004

第1回リアクション E3 S−4


 S−4 戦慄の鼠

 翌朝、わたしは村を散策した。旦那さんと奥さん、そして十数人の戻って来ていた村人たちは復興作業を再開していた。
 わたしは奥さんから手渡された、鍔の広い麦藁帽子を被り、村を一望できる小さな丘へと登った。
 そこには先の夫婦の娘さんがペットと遊んでいる、長閑かな風景があった。
 お嬢ちゃん、珍しいペットですね。これ、なんていうのです?
 えっとねぇ、ナーくんだよ。
 そのペットは手に乗るサイズの、逆立ちした哺乳類のようなものだった。尻尾が異様に長く、歩行に使用している器官は長い鼻だった……。
 ちょ、ちょっと……それひょっとして、ナゾベーム?
 うんっ。
 わたしは飛び上がってその場から逃げた。ナゾベームはネズミ科であるという、一つの学説がここに確立された……。

 はぁっ、はぁっ、はぁっ………はぁー。
 わたしは息を切らしながら、村の入り口まで来ていた。ふぅ、とようやく一息入れると、後ろから誰かに声を掛けられた。
 あのーちょっといいですか?
 振り返ると二人の青年がいた。いや、少年かな?ま、そんな感じの年頃の男の子がいた。
 私はセリア・ドーシルと申します。そしてこっちが……。
 ウォレン・ノースウィンドです。
 最初に話した体格のいいのがセリアで、後から自己紹介した知的な感じがするのがウォレン。わたしはそういう風にその時覚えた。
 それで何か御用ですか? わたしはラグナセカ・タイタヒルといいます。
 実は私の兄とウォレンの姉が、ここで行方不明になっているんです。私の兄、ルアフォートは先月の中頃、ウォレンの姉、ジェイリーアさんとこの村に来ていたんです。
 その後をウォレンが繋げるように喋った。
 ヌーの大群が村を襲ったのはご存じでしょう?あの事件の後から一カ月、ルアフォートさんと姉の消息が掴めていないのです。ひょっとすると、ここに戻っているのかも知れないと思い、捜しに来た次第です。
 でもわたし、ここの村人じゃなくてただの旅芸人ですから……その、余り役に立てないと思いますよ。
 その答えを聞いて、二人は肩を落としたようだった。そこでわたしは彼らを元気づけるため、一曲披露した。それは希望の歌だった。

 それはやってくる? それはやってくる
 信じて待っていれば それはやってくる
 それは救われる? それは救われる
 信じて行なえば それは救われる

  それは明朝のように それは来春のように
  それは孵化のように それは発芽のように

 お菓子の家と 青い鳥の 深い森の中で
 子供たちは 甘い夢で 捜し物を見つける
 そしてそれはやってくる
 そしてそれは救われる

 わたしは愛用のリュートを掻き鳴らし歌った。二人は芝生に座って聞き入っていた。
 ありがとうございます。少し勇気が湧いてきました。
 ウォレンはそう言って握手を求めた。
 そしてわたしもそこに座って、暫く雑談した。
 彼らの話によると、彼らの兄や姉は王都の学院で天文学を学んでいたらしい。先月ここに訪れたのは、天体観測のためだと言っていたようだ。
 わたしの姉はちょっと別の目的があったんです。
 ウォレンは少し付け加えた。
 姉は良くここに狩りに来ていたので、先月も星見半分、狩り半分だったと思います。私はそろそろ姉に、家の事を考えて欲しいのですが。
 そこまで聞いてわたしはやっと思い出した。ノースウィンド家と言う下級貴族が、王都にあったような……。問うてみると、ウォレンはその通り、私も姉もノースウィンド家の者です、と答えた。 ウォレンは今13歳で、学院で貴族学を学んでいるそうだ。セリアは一つ上の14歳で、兵士になるための勉強をしていると言う。
 ではそろそろ村の中の人達にも声を掛けてきます。さっきの歌、ありがとうございました。
 セリアはそう言い残し、村の中心へ足を向けかけた。わたしはその背中に一声掛けた。
 あの……さっきの演奏、20クロムになりますが……。

(次回「ある責任に関する物語」へ続く……)




指針NO.

E04:村の復興に力を貸す。
E05:セリアとウォレンに力を貸す。
E06:クォリネに留まりその他の事をする。
E07:他の場所へ行く。
   (行き先と行った先での行動を明記)




21:32:11 | hastur | comments(0) | TrackBacks