October 28, 2004

第0回リアクション E1 S−2


 S−2 太陽の空中分解

 僕達は暁の少し前にようやく床に就いた。
 そして僕は奇妙な夢を見ていた。
 それは昔から何回も見ているし、毎回違っていた。内容は小さい頃に聞かされたおとぎ話だった。
 男の子と女の子が森に迷って、お菓子で出来た家に着く、という筋の話だけど細部が毎回違っていた。
 僕は夢の中ではたいてい男の子の役だったり、客観だったりした。けど男の子と女の子の関係はちょっとずつ違った。あるときは兄妹で、あるときは姉弟。幼なじみの時もあれば、全く同じ顔の双子の時もあった。
 そして一番毎回変わっていったのが結末だった。お菓子の家には十中八九、悪い魔法使いのおばあさんがいるのだけど、逆に騙して暖炉で焼き殺したり、仲良くなって一緒にお菓子を食べたり、シロップのお風呂に入れられてお菓子にされたり、と様々だった。
 その晩の夢は、男の子が壊れたクッキーの柱時計を直してあげて、お礼におばあさんにウサギ型のケーキを作ってもらう、というものだった。
 はっきり言って訳が分からなかった。このおとぎ話の本当の結末も、いくら思い出そうとしても思い出せないままだ。
 昔、このことが気になって友達たちに話したことがある。でも返ってくる結末は十人十色だった。

 翌日、僕は昼前に宿屋の人に起こされた。珍しいものが見られるから表に出てごらん、という具合に起こされて、言われるままに僕は外に出た。
 玄関の所においてある帽子と手袋をとって外に一歩出ると、妙な違和感を覚えた。昼なのに外が暗かった。クォリネの上空には雲が無い、と散々ジェイルに聞かされていたので不思議に思い、太陽のあるべきところへ視線を移した。
 驚いたことに太陽が欠けていた。
 日食って奴だね。
 先に外に出ていたジェイルが僕のそばにやってきた。ジェイルも天文学を専攻しているだけあって、この現象にも詳しいようだった。当然僕にも一目で分かった。
 生まれて初めて見るよ……。
 そうしている間にも太陽は徐々に影に食べられていった。
 そしてついにリング状の太陽が作られた。
 その時、異変が起きた。
 周りの森からは一斉に鳥が飛び立ち、微かな地響きが感じられた。そして狩人風の男が村に飛び込んできた。
 逃げろ! 西の方からヌーの群れがこっちに向かってる!奴らは正気を失っているぞ!
 それから男は逃げろを連呼していた。村は騒然となった。
 なんてこと……ルア、逃げるよ!
 ヌーって何なの!? 逃げるって?
 ジェイルは明らかに焦っていた。
 ヌーってのは巨大な牛みたいなもんさ。普段は大人しいけど狂うと手に負えない。奴らは何百頭という単位で群れているから、この村を通過するとなると一溜まりもないんだよ!
 その説明の間、地響きはだんだん大きくなっていった。
 僕はその時、運命とか神とか、そういったものを少なからず感じていた。

(次回「ある選択に関する物語」へ続く……)




指針NO.

E01:白い館に逃げ込む。
E02:他の街や村へ逃げる。
   (行き先と行った先での行動も明記)
E03:クォリネに留まる。
E04:その他のことをする。




12:35:29 | hastur | comments(0) | TrackBacks