October 15, 2004

27歳の賢者


 27歳の賢者は言う。
「俺は風になびくものが好きだ。
 旗のように コートのように あの娘の長い髪のように。

 なびくというのは流されているのとは違う。
 確実に一点が固定されて、それでなびくのだ。
 俺はなびいていたい。
 時代に流されるでもなく 逆らうでもなく」


 27歳の賢者は言う。
「大昔 誰かが死を怖がった。
 みんながそれを真似た。
 死に対する恐怖の始まり。

 大昔 誰かが人を殺した。
 みんながそれを真似た。
 終わらない戦争の始まり。

 誰もが誰かの真似をしない。
 そんな時代に戻る事は 出来ないのだろうか」


 27歳の賢者は言う。
「隻眼の神は 冷酷で慈悲深い。
 罪を犯したものに 贖う事を忘れないように
 消えない傷を与え続ける。
 決して 罪人を殺したりはしない。

 俺は
 煙草の煙がしみないように
 片目を瞑って ギターを弾くだけだ」


 27歳の賢者は言う。
「選択権が全く無いという事は
 社会的に死んでいるという事。
 自殺する者は 社会的に生きる為 それを選択する。

 俺は
 芸術的に生きる為 自殺を選択するさ。
 色褪せるくらいなら 燃え尽きた方がマシさ」





20:43:51 | hastur | comments(0) | TrackBacks